海外情報連絡会 平成20年度 第1回講演会 要旨

France's Nuclear Energy : Status and Prospects

Pierre-Yves Cordier氏 (駐日仏国大使館 原子力部 原子力参事官)

 
約30名の参加者を得て、仏国大使館P.Y. Cordier原子力参事官の講演会を開催した。 以下、講演の要旨を紹介する。

仏国での原子力事情を中心に、以下の5点について講演する。 @仏国の原子力の現状、 A新しい原子力規制の枠組、 B将来に向けた推進政策、 C仏国の国内外向けエネルギー政策、 D日仏協力

1. 仏国の原子力の現状

仏国では58基のPWRと1基の高速炉(Phenix)が稼動中であり、63GWの発電を行っている。 PWRは比較的新しいものであり、運転年数は現在20年程度が主流。44基は10年以下である。 1999.12運開のCivaux2号が最新。第3世代炉であるEPRがLa Hagueの近くFlamanvilleに建設中。
原子力政策は、産業省と環境省に分かれていたが、 現在は新しい「エコロジー・エネルギー・持続可能な開発国土整備省」(MEEDDAT)の下で、 エネルギー気候局長(DGEC)が所管する。 規制当局(ASN:(新)原子力安全局)の独立性は2006年の新法により強化された。 研究開発はCEA(原子力庁)、製造事業は主にAREVAとAlstom、電力はEDF(電力公社)、廃棄物管理はANDRAが担っており、 IRSN(放射線防護・原子力安全研究所)は規制当局を技術的に支援する。 また、大きな決定ではpublic debateを重視する。

2. 新しい原子力規制の枠組

2006年核廃棄物法が制定され、 1991年以来進められてきた分離・変換技術、地層処分、中間貯蔵の開発に方向性が与えられた。 2012年までに第4世代炉やADSによる核変換技術の評価を行い、2020年にはプロトタイプ高速炉を建設する。 Bureの地下研究所で研究が進められている高レベル廃棄物地層処分は、 2015年に承認の決定を得て、2025年には操業を開始する計画。 中間貯蔵施設は2015年に建設。長寿命低レベル廃棄物(LALL)の貯蔵用に3000を超える候補地を選択した。 少なくとも処分後100年間の「可逆性(reversibility)」を担保し、 技術的ブレークスルーを取り込む可能性を残しておくことが鍵となっている。
2006年原子力の透明性・セキュリティ法が制定され、規制インフラが再編、確立された。 従来の原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)が、新しい原子力安全機関(ASN)に再編され、規制の独立性が強化された。 Local Information Committee(CLI) は、地元自治体の種々のセクターを代表する構成員からなり、 PA上、極めて有効に機能している。 High Committee on Transparency and Information on Nuclear Safety(HCTSIN)は、シンクタンク的な機能を担っており、 去る6/18に第1回会合を開催。 SellafieldからLa Hagueへのプルトニウム輸送の問題を議論し、 核物質防護を確保しながら情報の開示範囲を拡大するよう勧告した。 国会議員、CLIメンバー、環境保護活動団体(グリーンピースではない)代表者、 原子力産業界、労組、科学情報等の専門家等がメンバーである。

3. 将来に向けた推進政策

第3世代炉EPRが、FinlandのOlkiluotoと国内Flamanvilleで建設中である他、 新しい遠心法に基づくウラン濃縮プラントGB(Georges Besse)-IIを南仏に、 新しい材料試験炉Joules Horowitz炉(JHR)をCadaracheに建設している。 GB-IIは2009年に運開し、2016年にフル稼働(7.5MSWU)となる計画の十億ユーロ規模プロジェクト。 JHRは第2世代炉の寿命延長、第3、第4世代炉の燃・材料開発に利用する。 国際パートナーシップ(日本も参画) による5億ユーロ規模のプロジェクトで、出資国はアクセス権を得られる仕組み。
Na冷却高速炉を第4世代の主概念として開発するが、ガス冷却高速炉も興味深い概念と位置づけており、 第4世代国際フォーラム(GIF)等を活用して研究を進めている。 また、これらの炉からの使用済燃料の新しい処理プロセスも開発して行く。
欧州全体で原子力ルネッサンスが巻き起こっている。 特に注目すべきなのは英国とイタリア。多くの国が原子力回帰に向かっており良い兆候である。

4. 仏国の国内外向けエネルギー政策

Sarkozy大統領になっても政策に変更はなく、CO2の放出がない基幹エネルギーとして政策の加速が図られている。 2007.9.24の国連気候変動会議で、「仏国は原子力平和利用により生活の向上を図る如何なる国にも支援を与える」と宣言。 本年5月に原子力国際庁をCEA傘下に設置した。 原子力国際庁のステアリングには、CEAだけでなく、外務省、MEEDDAT等も参画する。 日本で言う3S(安全、セキュリティ、保障措置)を前提とした二国間協力を進める。 Sarkozy大統領は既に中東諸国(モロッコ、アルジェリア、UAE等)を歴訪。
2008.7.国内EPR2号機の建設計画を発表。2009年にサイトを決定し、2017年運開。

5. 日仏協力

福田、Fillonの日仏両国首相により、本年4月原子力宣言。両国のエネルギー政策、原子力政策には似た点が多く、 地球温暖化対策として共通の戦略を取っていく。Fillon首相は、甘利経産大臣と共にJNFL六ヶ所再処理施設も訪問した。
今年は日仏交流150周年。今後とも、日仏の進んだ原子力技術で気候変動問題に立ち向かって行きたい。

以上