海外情報連絡会 平成19年度 第3回講演会 要旨
FaCTプロジェクト(FBRサイクル実用化研究開発)に関わる国際協力について
近藤 悟 氏 (日本原子力研究開発機構 次世代原子力システム研究開発部門)
約30名の参加者を前に,FaCTプロジェクトの概要、およびFBRサイクル分野での国際協力の内容についてご講演いただいた。以下,講演の要旨を紹介する。
1)FaCTプロジェクトの概要
高速増殖炉サイクル技術は、限りあるウラン資源を有効利用し、環境への影響を最大限低減することにより持続的な社会を支えるエネルギー技術であることから、第3期科学技術基本計画の国家基幹技術に選定されている。
日本原子力開発機構では、実用化戦略調査研究(1999〜2006年)を行い、原子炉システム(ナトリウム冷却炉)と再処理・燃料製造システム(先進湿式法+簡素化ペレット法)の実用化候補概念を明確化した。今年度からは、FBRサイクルの実用化に重点を置いた「FBRサイクル実用化研究開発」を開始しており、2015年にかけて革新技術の要素技術開発、実用施設及びその実証施設の概念設計を実施する計画となっている。
原子炉システム側の開発については、5社協議会(文科省、経産省、電気事業者、メーカ、原子力機構)の決定を受けて、本年4月には三菱重工業鰍ェ中核企業として選定された。その後、FBR開発会社として三菱FBRシステムズ鰍ェ7月に発足し、FBR開発に係るエンジニアリング等を効率的に実施する体制が整備されている。
2)主要国におけるFBR開発計画
フランスでは、原型炉フェニックスが2009年に運転終了となるが、第4世代原子炉のプロトタイプを2020年に運転開始すると発表している。
アメリカは、2006年のGNEP構想発表により、再処理路線の復活を目指しており、先進リサイクル炉、統合核燃料取扱センター、先進核燃料サイクル施設の設計仕様を2015年までに確定し、以降建設に着手する計画を進めている。
中国は、2009年に実験炉の運転開始を予定しており、順次原型炉、実証炉、商業炉の計画を進め、2050年ことに、200GWe程度のFBR設備容量を計画している。また、インドでも、2011年に原型炉の運転開始を予定し、2020年までに4基の商業炉を計画している。
3)国際協力の現状
世界標準技術によるFBRサイクル技術の実用化、また研究開発リスク/必要資源量低減、開発期間の短縮を目的として、国際プロジェクトが本格化している。
第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)におけるナトリウム冷却高速炉の分野では、日、仏、米、韓国、EUが参加し、システム統合・評価、安全・運転性、先進燃料、機器・BOP、包括的アクチニドサイクル国際実証の5つの研究プロジェクトを推進している。
国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)では、日仏米中露+11ヵ国が参加している。また、GNEPに基づく原子力研究開発協力として、日米共同行動計画が本年4月に策定され、高速炉技術、燃料サイクル技術の研究が開始される計画となっている。
仏、米については、中長期的な目標を共有でき、今後20年程度の間に実証炉/原型炉の建設を計画していることから、より一層の密接な協力を目指している。特に、研究開発資源の分担や知識の共有を図るとともに、国際標準化技術として確立していくことが我が国の国益にもかなうと考えられる。
以上