海外情報連絡会 平成19年度 第1回講演会 要旨

The Role of Professional Societies in the Responsible Global Expansion of Nuclear Energy

Harold McFarlane氏 (American Nuclear Society 会長

60名超の参加者を得て、ANS会長H. McFarlane氏の講演会を開催した。以下、講演の要旨を紹介する。

 

原子力エネルギー利用は世界規模で拡がりが予測されるが、人的な要素が重要であり、専門学会が原理・原則を提供し、人類の利益のために、いかに、協力して影響力を行使していくかが重要である。

世界的に原子力エネルギーの見直しが進み、その利用を維持・拡大していこうとしている国や、環境・人口問題を背景に急速に利用を拡大しようとしている国が増えている。米国では1978年に原子力プラントの発注があって以来、発注のキャンセルが相次ぎ、停滞していたが、現在では103基のプラントで100Gweの発電容量となっている。80年代以降、設備利用率(Capacity factor)は継続して改善され、最近では平均で約90%の利用率となっている。そのような状況の中で、エネルギー安全保障や原油価格の高騰、気候変動を背景として、原子力エネルギーが見直されてきている。経済的にも原子力は石油、石炭、ガスに比べて発電コストが小さく、燃料コストが発電コストに占める割合も小さい。また、環境的にも、CO2を排出しない発電の73%を占めている。Energy Policy Act2005(包括エネルギー政策法)により、新規原子力プラント建設のための支援策や原子力開発のためのR&D推進が示された。電力需要が増大している米国の南部と東部を中心に33プラントの新規建設の通知がNRCに出されている。米国市場ではGen-III炉ではABWR、USAPWR、またGen-III+炉ではAP-1000、ESBWR、US EPRが競合しており、新規建設に向けて日米仏の原子炉メーカーや鉄鋼製品メーカーが協力している。一方で、GNEP(Global Nuclear Energy Partnership)が米国から提案され、世界的な原子力の展開の枠組みを提供しようとしており、そのなかでも日米の協力が重要となる。また、世界的に見ても、中国、インドなどで急速な電力生産の伸びが予測されており、その中でも原子力エネルギーの利用拡大が予測されている。

 ANS(American Nuclear Society)は1954年に設立され46ヶ国に11000人の会員を持ち、7ヶ国に国際支部(international section)がある。その中で、日本原子力学会とは国際会議などで頻繁に協力を行い、また、最近ではインドなどへも代表団を送るなど密接な関係を築いている。新規プラント建設でも国際的な協力が重要となるし、放射線利用においても宇宙開発や農業、製造業、医学、環境保護などの分野で利用が拡大している。我々のチャレンジは、安全や環境面での責務、人類の利益のための原子力エネルギー平和利用について、我々の声を結集して影響力を行使し、国境を越えて、INSC(International Nuclear Societies Council)、PBNC(Pacific Basin Nuclear Conference)などの活動を支援し、IAEA(International Nuclear Energy Agency)などの国際機関を支えて行くことにある。ともに協力し合うことが信頼とお互いへの敬意を強めることにつながる。