海外情報連絡会 平成18年度 第3回講演会 要旨

IAEA Activities in support of rising expectation for the role

of nuclear power in developing countries

尾本 彰氏(IAEA原子力開発部長)

 

IAEAの目から見た原子力発電の現状、発展途上国の原子力導入のためのインフラ整備に関するIAEAの活動について紹介された。

 

(1)原子力発電の現状

現在、世界各国で運転中の原子力発電所は442基、発電容量は約370GWeであり、総発電量の16%を占めている。エネルギー需要の増加から、原子力発電所の新設計画があるが、それらはアジアに集中しており、中国では2020年までに現在の6倍に、インドでは9倍に発電容量を増加する計画である。また、アメリカでも老朽化に伴う発電所のリプレイスのために30基程度の新設が計画されている。このような原子力発電への期待の高まりを受け、IAEA20053月にパリで「21世紀の原子力エネルギー」と題する閣僚級会議を行った。これを契機に途上国の原子力に対する期待がさらに高まった。

 

(2)インフラ整備に関する活動

IAEAの活動の3本柱は、科学技術、安全及び保障措置、査察であり、科学技術並びに安全及び保障措置の分野では約900の技術協力が行われている。原子力発電分野の協力活動は少ないが、参加国は増加傾向にある。

原子力発電分野におけるIAEAの役割は、放射線防護の確立、継続的な技術革新の他、途上国の要求を取り入れることである。そのため、IAEAでは途上国が持続的発展を達成するために原子力発電所を導入する計画があれば、その実現性に関する評価のサポートをしている。途上国からは個別かつ具体的な支援を要請されることが多いが、IAEAは規制、核不拡散などのインフラ整備を先に行うことが重要と考えている。

途上国の場合は建設資金の調達が最重要課題であり、技術、許認可、資金調達などに関する国際的な仕組みを築くことが重要と考えている。その具体的な取り組み方について既存のガイダンスの見直しを行っている。

 

(3)課題

今後の原子力発電所の増加に伴いウラン資源を確保することもIAEAの大きな仕事の1つである。このように仕事は増えているが人員および予算が少ないので、日本の更なる貢献に期待している。