海外情報連絡会 平成18年度 第1回講演会 要旨(1/2)

Outline of the Global Nuclear Energy PartnershipGNEP

Jeffrey A.Miller (米国大使館 エネルギー担当官 エネルギー省日本代表)

 
200626日にDOEより公表されたGNEPについて,概要(目標と各要素の内容),現在の状況,日米関係について説明があった。GNEPのゴールは,エネルギー源としての原子力を確保するとともに,核拡散リスクの最小化である。原子力エネルギーの確保と核不拡散というグローバルな課題はグローバルな枠組みで解決する,という考え方に基づいて提唱しているものであり,原子力活用拡大,廃棄物最小化,燃料サイクル技術開発,高速燃焼炉の開発導入,国際的な燃料サービスプログラム確立,小規模原子力発電所の開発,保障措置技術の強化,の7項目から構成されている。

(1)GNEP7要素の概要

  @原子力活用の拡大:Nuclear Power 20102005年エネルギー法により,次世代炉の建設を推進中(今後1020年で25基の建設を予想。2010年には発注がある)。A原子力廃棄物の最小化:ユッカマウンテンを活用する,B新しい燃料サイクル技術の開発・導入:プルトニウムを分離しない処理技術を開発する,CABR (Advanced Burner Reactor) の設計・開発:再処理燃料からエネルギーを取り出すことが出来る高速燃焼炉(及び試験炉)を建設する(もんじゅの再開と,もんじゅでの燃料試験に期待),D燃料サービスプログラムの確立:開発途上国に対して原子燃料を提供できるようなプログラムを確立し,核拡散のリスクを最小化する(途上国はインフラなしに原子力の利益を享受できる),E小規模の原子力発電プラントの開発:開発途上国のニーズに合致する小規模の原子力発電プラントを開発し供給する,F保障措置技術の強化:保障措置技術を改良し,核拡散に対する抵抗力を強化する。

(2)現在の状況

  米国政府は,日本,フランス,ロシア,イギリス,中国の各政府に対して既に説明済みであり,イギリス(政府機関により検討中)を除いて,具体化のための検討段階に入っている。また,IAEAにおいて約40カ国に対して説明するとともに,ワシントンDCにおいても各国科学代表に対して説明済み。現時点では,カナダ・韓国と詳細な議論を開始した。

(3)日本とアメリカの関係

  高速増殖炉と再処理技術の開発を継続的に推進してきた日本との協力関係は,極めて重要であり,1月から議論を開始している。現在,協力内容の詳細を詰めている段階である。

  日本とアメリカは,プルトニウムの利用形態が異なっている。日本は増殖を志向しているが,アメリカは核不拡散の観点からTRU一体回収を予定している。それぞれの方向性とも課題があり(日本は処分・FBRのコスト・人的リソース。米国は分離技術・アクチニド燃料・将来の増殖の必要性),日米で協力することが必要である。

 

海外情報連絡会 平成18年度 第1回講演会 要旨(2/2)

GNEPに対する原子力機構の取り組み

丹羽 元 氏(日本原子力研究開発機構 次世代原子力システム研究開発部門

FBRサイクルグループリーダー・研究主席)

 

 ミラー氏のGNEPに関する説明を受けて,日本及び原子力機構としての取り組みについて講演頂いた。日本のGNEPへの対応の経緯や,GNEPの推進工程の詳細について説明があった。日本としては,前向きに協力を検討する方向であることや,GNEPの重要な要素であるABTRTRU燃焼炉)やESD(工学規模再処理試験装置)については,設計段階の成果に応じて推進の可否を検討する予定であることが紹介された。

 なお,講演資料にはGNEPの概要が含まれていたが,ミラー氏の講演内容と重複する部分についての説明は割愛された。

(1)日本/JAEAの対応方針の検討経緯

  GNEP構想の発表の翌日(27日),4府省(内閣府,外務省,文科省,経産省)は,GNEP構想を評価する見解を公表。

  2月末,政府間会合において,DOEより協力要請。GNEPの目標は原子力機構で実施中の実用化戦略調査研究の目標と一致しており,前向きに協力可能な点の検討を開始。

  JAEA内にGNEP対応検討会を設置し,方針・協力可能分野等を検討。

  46月にかけて,各レベル(政府間,研究機関間)で日米の意見交換を実施。

  この間,55日に,文科省小坂大臣とDOEボドマン長官のGNEPに関する協力課題合意事項5項目(我が国の再処理及びMOX燃料製造技術に基づく米国の核燃料サイクル施設の共同設計活動,常陽・もんじゅを活用した共同燃料開発,原子炉をコンパクト化する構造材料の共同開発,ナトリウム冷却炉用主要大型機器の共同開発,我が国の経験に基づく核燃料サイクル施設等への保障措置概念の共同構築)が発表された。

(2)GNEPの推進アプローチ

  GNEPの技術実証アプローチの工程は,下記の三段階に分かれていることが紹介された (DOE発表内容)。「クリティカルディシジョン」の判断ポイントでは,判断ポイントまでの検討結果に応じて,中止も含めた決定がなされるとのことであった。

  ○第1段階 立上げ期間(20069月終了)・・・計画内容検討と予算措置

  ○第2段階 評価期間(20089月終了)・・・実証用施設の概念設計,コスト試算等

   (Critical Decision (CD) -1

  ○第3段階 実証期間(2009年〜2020年)・・・実証用施設のプロジェクト推進〜運転

   (CD-2:詳細設計,CD-3:建設開始,CD-4:運転開始)

(3)ABTR/ABR (Advanced Burner Test Reactor/Advanced Burner Reactor) の計画

  炉心規模でのTRU燃料の核変換の実証,ABRのためのTRU燃料や材料の性能確認,ABR設計認証基盤の整備を目的として,まずABTRを建設し,その成果を踏まえてABRを建設する。

  工程としては,ABTR:概念設計200610月〜20083月(CD-1),運転開始20142019年,ABRABTRの運開から約10年後との観測。

(4)ESDEngineering Scale Demonstration Facility)の計画

  核拡散抵抗性の高いリサイクル技術を工学規模で実証することを目的としており,TRUを一括回収できる先進的分離プロセス (UREX+) を利用する予定である(超ウラン元素をエネルギー源として再利用,廃棄物を最小化,PUREXよりも核拡散抵抗性を向上)。

  UREX+は,実験室スケールでは純粋Uと全TRU捕集に成功している。

  ESDによって,ABTRの燃料を供給する予定 (100 tHM/y程度の規模と推定) である。

  工程は,概念設計2006年開始,運転開始2011年〜2015年。

(5)諸外国の高速炉導入の情勢

  フランスは,G-4のプロトタイプを2020年ごろに運転開始,とシラク大統領が発表したが,これまでの経緯(Super Phoenixの廃炉,ガス高速炉の研究)を踏まえると,ナトリウム炉になるかどうか,不透明である。

(6)JAEAの対応方針

  基本的考え方(目標が共有できる,日本の技術が世界標準となる,日本にとっての利益が明確,協力関係の構築において柔軟な選択肢が選べる,知的所有権の確保に留意,日本の計画に悪影響がないこと)に基づいて,協力を進める。

  既に,高速炉設計・燃料開発・分離技術開発・AFCF設計・先進的設計用ソフトウェアアーキテクチャ・保障措置技術,について協力を打診されている。JAEAの希望とほぼ一致しており,今後具体的な協力方法・内容を検討する。

(7)今後の対応

  政府間で情報交換と協力の枠組みを検討し,研究機関間で分野毎に情報交換と協力項目の検討を開始。項目の議論は,比較的短期の項目に重点(20089月がターゲット)。

(8)留意点

  米国の政治動向(ブッシュ大統領は2008年で退任),他国の動向・協力関係(特にフランス),GIF/INPROとの関係,等に留意して進める必要がある。