海外情報連絡会平成17年度第3回講演会要旨

     日時:2005128 17:3019:00

     場所:東京工業大学

     講師:Ms. Gail H. Marcus(Deputy Director-General, Nuclear Energy Agency)

     演題:Global Prospects for Nuclear Power

 

1.NEAの概要

 NEAは、OECD28国で構成されており、80人のスタッフ、1200万ユーロの予算で、その半分を日米の2国が拠出している。業務は、国際協力を通して原子力平和利用を維持展開していくこと、更には各国原子力政策に関する政治的判断をするための評価を提供することである。

 

2.原子力の見通し

 原子力に影響を及ぼす3つの重要な因子は、地球温暖化、エネルギー供給の信頼性、発展途上国(即ち、中国及びインド)におけるエネルギー需要の増大である。原子力は、OECD諸国で全世界の85%を占めており、日本は、この128日で東北電力東通原子力発電所が営業運転に入り、合計54基となっている。

 京都議定書では、地球温暖化を防止していくには十分でなく、新たな対応を迫られている。

 化石燃料は、短期的には政治、テロリズム、自然災害等の影響を受け易く、中長期的にはリソースの減少及びそれに伴うコスト増大の影響を受けることになる。一方、原子力は国内的ソースであり、ウラン埋蔵量は膨大であり、(化石燃料の様に偏在がなく)世界的に分布しており、かつ政治的安定な国に存在している。増殖炉等によりその寿命も延びている。しかも、原子力のコストに占める燃料費の割合は15%であり、化石燃料の数分の一で、その燃料コストの影響を受けない構造となっており、発電コストも化石燃料に比して遜色ない値である。

懸案として、廃棄物処分の問題があるが、技術的には安全に処分できることは評価済みであり、明らかに特殊な社会問題である。今後の展開として、使用済燃料の再処理或いは中間貯蔵という選択肢もある。米国においても再処理に関する研究も再開されようとしている。

最近になって、環境保護派の中で原子力賛成を表明している人々も多く今後さらに原子力賛成派に転ずる人も想定されている。

 さらには、米国でエネルギー法が2005年に制定され、全てのエネルギーに適用される。内容は、原子力建設に関する経済的インセンティブを与えること、R&D計画を奨励すること等である。これを受けて、米国の各電力会社が2007年から2008年にかけて新しいタイプの原子炉の許認可申請を実施する計画を立てている。

国際的には、R&Dの分野で協力していく機運が生まれており、NEAでは技術的事務局として行動している。

 

3.結論

・地球温暖化と供給の信頼性の観点から、原子力への新しい関心が創出されている。

     原子力以上に明確な利点を持っているエネルギーソースは存在しない。

     最近世界で重要な原子力開発に影響を及ぼす多くの事象が起きている。

     原子力の将来に影響を及ぼすポジティブ因子とネガティブな因子がある。ネガティブな因子は原子力事故であり、これは発生国だけでなく全ての国に対して影響を及ぼすものである。ポジティブな因子は、公衆の関心である。原子力をエネルギー問題解決策として大いに期待している。

 

以上