日本原子力学会 海外情報連絡会 平成16年度第1回講演会 要旨

海外情報連絡会 平成17年度 第1回講演会 要旨

Energy with Wisdom in Finland

− オーロラの国フィンランドの知恵 −

田中 稔彦 氏 (フィンランド技術庁顧問)

平成17623


フィンランドは日本に比較して、国土面積こそ同程度であるが、人口比で1/24と小さな国であるが、エネルギー関連については、世界一または世界初といったエポックメーキングなことを実行するダイナミックな国である。

環境面については1990年に世界に先駆けて炭素税を導入、経済規制面でも1995年には電力を完全自由化、原子力については、核燃料廃棄物の永久保存場所を世界で初めて決定したほか、世界最大の発電量を誇る1600MWe級の原子力発電所の建設を開始したところである。

 


(
) フィンランドのエネルギー事情
 ・ フィンランドはビジネス競争力指数で1位(日本は13位)、環境維持指数でも1位(日本は78位)である

環境維持とビジネス競争力は決して相反するものではない

・ フィンランド単独のプライマリ・エネルギーとしては化石燃料、非化石燃料ほぼ半々の状況

・ 電力エネルギーの自給率では国産:23%、輸入:77%で、輸入元のうち半分強をロシアが占める

・ ノルディック4国(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド)で電力市場(Nordic Pool)を形成

・ ノルウェーの水力の影響が大きく、2003年には渇水状況を反映し電気価格が高騰した

・ エネルギー保障上の問題もあり原子力は重要な電源

・ オルキルオトにEPR(1600MWe)を5番目の原子力発電プラントとして建設中

・ 原子炉の稼働率は良好に推移し、平均で90%程度である

 


(
) バイオマス発電の実態
 ・ 木質バイオによるエネルギー供給が京都議定書基準年以来、順調に延びている
 ・ 木質バイオ、ピートは化石燃料に比較して再生するサイクルが桁違いに短い
 ・ 木質だけでは水分変動が大きいがピートとの混焼で安定
 ・ フィンランドの木材消費量は欧州一であり、一人当たりでフランスの24倍!

 ・ 木材利用効率が高いのは流通に鍵がある 日本と違い平地、集荷拠点も整備

 ・ 世界最大のバイオ燃焼発電所(240MWe+160MW熱)をもつ 熱電総合利用が重要

 

 
(
) 京都議定書遵守への道
 ・ 1990年と2000年を比較するとCO2排出量は減っている(日本は増えている)
 ・ 京都議定書遵守を考えるとオルキルオトに5番目の原子炉を建設したことの意味がわかる
 ・ 今後のGHC(グリーンハウスガス)排出動向予測を考えると6番目の原子炉が必要という議論になるかもしれない

 
(4) まとめ (フィンランドから学べるものは?)
 ・ 炭素税の導入 (日本の産業には競争力がある)
 ・ 森林資源の拡大利用 森林面積はフィンランドと変わらない

 ・ 森林資源活用のために流通の整備 都市ゴミとの共用はどうか?
 ・ Combined Heat & Power の採用 (北欧でなくても冷熱利用はできるはずなぜチラーに使わない?)
 ・ 既設原子力発電所の稼働率向上

 ・ 新規原子力発電所の建設

 

 

 

フィンランドでは、高い技術力と進取の気性で、環境と経済の両立を実現してきた。炭素税に限らず税金が高いというイメージがあるが、実際にはこれらの税金によって医療も教育も老後の暮らしも保障されている。したがって、手元に残るお金はすべて可処分所得といった感覚があり、これがいろいろなことにチャレンジする風土を育てている。ノキアなど最先端の企業がフィンランドから出てきたのは決して偶然ではなくこれらの風土がはぐくんだものである。高い競争力と環境維持は決して相反するものではない。