日本原子力学会海外情報連絡会

平成17331

 

 

平成16年度 第5回講演会 要旨

 

1.概要
本公演は、日本原子力学会2005年春の年会において、海外情報連絡会の企画により行われた。

演題:“Nuclear Energy in the United States
講師:MsNicole Nelson-Jean(DOE Asian Office, US Embassy)
日時:平成17331日、11001200
場所:東海大学湘南キャンパス6号館6B101教室

2.講演要旨

(1)   アイゼンハワー大統領の国連演説 (Atoms for Peace)
今から約50年前(1953)にアイゼンハワー大統領が国連において原子力の平和利用を訴える演説 (Atoms for Peace) を行った。その演説の中で、大統領は、次のことを強調した。

@     平時における核分裂性物質の有効な利用法を世界的に調査する。

A     世界の核兵器の潜在的な破壊力を削減する。

B     世界中のすべての人が、兵器を作ることよりもこの輝かしい時代の人類の希望に注目するようにしたい。

C     原子力にかかわる困難な問題を平和的に解決するための対話を始めよう。

この演説を受けてIAEAが設立され、原子力の利用は、電力だけでなく、放射線による生物分野へも応用されている。現在アメリカの原子力による発電力量は、8000kWhrに達している。

(2)   Nuclear Power 2010 InitiativeAdvanced Fuel Cycle Initiative
原子力は実は最も信頼の置ける効果的なエネルギー源である。現在アメリカにおいて原子力は第二位の電力供給源として103基の発電所で発電量の約20%を供給している。米国エネルギー省の予想によれば、1.8%の緩やかな成長を仮定したとしても2020年までには393000メガワットの追加電源が必要となる。ブッシュ大統領はNational Energy Policy を作成・発表して将来のエネルギー需要の増加に向けて挑戦を始めており、原子力はその方策の一つとして位置付けられている。現在進められているNuclear Power 2010 Initiativeは、2010年までに新規発電所を建設することを目標にしている。しかし、原子力発電所の建設には、全く新しい技術に対する新しい規制の下での大きな資本投資のリスクが存在する。この点については、日本を参考にすることもある。
新型路の開発について、アメリカはGenIV(第四世代原子炉)の開発を推進する。これは、長期の安定した運転、廃棄物の低減、信頼性の向上を通じてライフサイクルコストを低減するものである。
また、燃料サイクルを最適化し、処分場を有効に利用するためにAdvanced Fuel Cycle Initiative(AFCI)に取り組んでいる。これは、高レベル廃棄物の毒性を低下させ、安全かつコスト・イフェクティブに使用済燃料を処分できることを目指している。

(3)  核不拡散への取り組み
大量破壊兵器の脅威に対抗するために、核不拡散は重要である。核兵器級(Weapon Grade)Puの処理を加速させている。現在進めているGlobal Threat Reduction Initiative(GTRI)では、以下の行動がとられている。

@    来年の終りまでにロシア起源の高濃縮ウラン燃料(HEU)をすべて送還するためにロシアとのパートナーシップで 2010 年までに完了する予定である。

A    すべての米国起源の研究用原子炉に使われた燃料の本国送還を行いたい。

B    また、研究用原子炉の燃料を低濃縮ウランに代替するための援助を行う。

C    それ以外の核原料物質の管理を強化する。

(4)  質疑応答
アメリカの再処理戦略について:
AFCI
は直ちに再処理路線を選択するものではなく、現在のアメリカの政策は使用済燃料の直接処分である。AFCIは、Yucca Mountainを有効に利用するための施策である。

研究用原子炉の燃料の送還について:
GTRI
はパートナーシップに基づくものであり、個別に協議する。

(文責:海外情報連絡会運営委員、藤田)