2004年度 海外情報連絡会 第4回講演会

 

1.実施日、場所     : 2004128日(水)、JNC青山

2.講演題目           : ITER計画の現状」

3.講演者              : 日本原子力研究所 常松 俊秀 ITER開発室長

4.講演概要          

 「ITER計画の現状」と題して、核融合反応の原理、核融合性能の進展、ITER計画の位置づけとこれまでの進展、政府間協議と技術活動、ITER建設合意に向けた関係国との交渉状況など幅広い話題について講演された。

 

(1) 核融合反応の原理

 核融合反応、プラズマ、閉じ込め方式、トカマク装置の仕組み、発電炉のしくみなどの基礎的な事柄について簡単に説明された。

 

(2) 核融合性能の進展

 1960年代から1990年代のJT-60等による臨界プラズマ条件の実現までの核融合プラズマ性能の進展について概観された。その進歩は、トランジスタの集積度、加速器のエネルギーなどの異なるハイテク分野と同様な絶え間ない急速な進歩であることが指摘された。

 

(3) ITER計画の位置づけとこれまでの進展

 わが国では、ITERは核融合によるエネルギー取り出しを実証するための実験炉として位置づけられており、核融合によるエネルギー利用実現のための大きなステップである。

 これまで、概念設計活動(1988年〜1990)、工学設計活動(1992年〜2001)ITER建設に向けての政府間協議と技術活動(2001年〜現在)と段階的に世界規模でITER計画は推進されてきた。工学設計活動で行われた主要なR&D分野として(a)中心ソレノイドモデルコイル、(b)真空容器セクター、(c)ダイバータカセット、(d)ブランケットモジュール、(e)遠隔操作技術、(f)負イオン源、(g)中性粒子によるプラズマ加熱技術、(h)高周波によるプラズマ加熱技術などの成果が紹介された。

 

(4) 政府間協議と技術活動

 200111月より、EU、カナダ、ロシア、日本の4極によりITER計画の共同実施に向けた政府間協議が開始され、同協議の下で技術活動(調整技術活動(CTA)、移行活動(ITA))を実施している。これまで技術活動として、(a)建設期の運営体制の構築、(b)建設における機器調達方式の検討、(c)建設における調達機器の検討、(d)世界のサイト候補地の検討(六ヶ所サイト候補地の現状、日欧サイトの比較など)、(e)安全関連の技術検討、(f)耐震・免震設計技術などの自主基準案の構築、(g)受け入れ側として必要な準備の検討などを進めており、これらの活動の成果と現状が紹介された。

 

(5) ITER建設合意に向けた関係国との交渉状況

 ITER建設合意に向けた関係国との交渉状況として、これまでの交渉の経緯、交渉の現状、ITERの国内誘致の意義、200411月の欧州委員会のプレスリリースとロイター通信とのニュアンスの違いについて説明された。

 最後に、ITERは建設できる準備がすでに整っており、ITERの実現を通して国際社会に貢献したいと願っているとまとめられた。