海外情報連絡会 平成16年度 第2回講演会 要旨
英国の原子力産業−その歴史、改革、そして未来
Dr. John Edwards (BNFL Japan KK 社長)
英国の原子力産業は、これまでにない大規模な再編に直面している。
1999年大きな問題を契機にBNFLは、企業の再編と企業戦略の見直しを行った。
本講演では、英国の原子力産業の歴史、BNFLが変わらなければならなかった理由と
将来展望について述べられた。
(1) 歴史
・ 1940年代後半 軍事用原子力施設の建設開始。
・ 1956年 世界初の商用原子力発電所は、コールダーホールで操業開始。
・ 英国の原子炉開発計画の主要3段階:
−1956〜1971 : 11基のマグノックス(Magnox)炉を建設
−1976〜1988 : 7基の改良型ガス冷却炉を建設
−1994 : Sizewell B の PWRを操業開始
・ 英国は、自給自足の原子燃料サイクルを実現。
・・・1940年代から2000年代に至るセラフィールドの歴史を紹介。
(施設建設状況の航空写真他)
・ 現在、これらの施設の廃止措置に関する議論が進展中。
(2) 改革の原動力とその全容
・ 改革の原動力は、1999年:
−英国保健安全執行部(HSE)のセラフィールド管理監督体制の監査及び改善を勧告。
−MDFデータ改ざんが発覚(9月)
−工場の操業実績が低下
・ BNFLの対応
−BNFLは、信頼できるサプライヤーであることを証明するため変革の必要性を痛感。
−新社長の強いリーダシップと管理職及び一般社員の問題解決への完全支持。
−MDF問題、HSEのチーム監査報告書を中心に事業プログラムを作成。
−改革の重点はセラフィールドに置かれた。
−関西電力、原子力産業、日本国民の皆様に多大な迷惑をかけたことは誠に遺憾。
信頼回復に引き続き努力する。
・ 改革例の紹介
−企業レベル・グループレベルでの改革
・・・マネージメントと社員とが共同で開発したセラフィールドにおける行動規準が紹介
された。
−MOX燃料に関する改革
・・・検査の自動化、クロスチェック。部品・製品のトレーサービリティーの中央コンピューター管理。
新たな品質保証システムの開発(ISO2000を取得、JEAG4101への適合)。
研修システムの改善など。
(3) 今後、そして展望
・ 2001年に英国政府は、原子力廃止措置機関(NDA)を設立しBNFLとUKAEAの資産
及び債務をNDAに移管すると発表。
・ NDAは、原子力における負の遺産のクリーンアップを安全で費用効率的にかつ環境を
保護する方法で実施する責任を負う。
・ 2004年7月、NDA設立に必要な法律が議会を通過。新組織は、2005年4月1日に発足。
・ 2005年4月1日には、全ての資産及び債務は、BNFLではなくNDAの所有となる。
資産例 : Thorp, SMP, Waste plants, Magnox reactors
債務例 : 全ての施設の廃止措置費用、廃棄物管理の関連費用
・ NDAによる影響
−BNFLは、今後も英国政府の所有会社。
−原子力産業の焦点の変化−負の遺産のクリーンアップや廃棄物管理が優先事項。
−商用再処理は継続されるが、新規契約は特定要件を満たす必要がある。
−既存契約は、守られる。
−BNFLは組織再編を実施−目標は、NDAの優良サプライヤーになること。
−BNFLは、よりプロジェクトに焦点を当てて事業を展開。
以上をまとめ
・ 過去の4年は英国原子力産業にとって大きな変化の時であり、BNFLにも重大な影響を及ぼ
した。
・ NDAの設立を受け入れ、原子力産業の新たな環境下でも成功を収められるように全力を尽
くす。
・ リサイクル事業を継続し、日本にとって信頼できるサプライヤーになることを目指す
−過去から学び、皆様に信頼いただけることを証明したい。
と結ばれた。