海外情報連絡会 平成15年度 第4回講演会 要旨

高温ガス炉、超高温ガス炉の開発動向

土江 保男氏(日本原子力発電)

 

 高温ガス炉の開発の歴史と現在の状況並びに今後の開発の動向、特に超高温ガス炉の開発動向、
 課題、見通しなどについて、非常に分かりやすい講演が行われた。

(1)高温ガス炉、超高温ガス炉の特徴、歴史

 高温ガス炉は、超安全で多目的に利用できる炉として 60年代から研究が行われてきた。
  ・ '60〜'80年代:実験炉、原型炉の開発、実証(欧、米)
  ・ '70〜'80年代: 大型炉開発、導入計画検討(米、日、他)
  ・ '80年代後半 : 開発(原子力開発全体)が衰退
  ・ '90年代〜  : 試験・研究炉、小型モジュール実用炉開発(日、中、南ア、米・露、他)
  ・ '00年代(現在):原子力による水素製造を強く指向


(2)小型モジュール高温ガス炉の開発動向

 南アフリカPBMRプロジェクトについて、炉の概要、経済性、開発体制について報告が行われ、
 以下のような開発スケジュールで進められるとのこと。
  ・ '93〜   : 概念設計
  ・ '95〜   : 詳細設計
  ・ '01〜   : Heガスタービン設計開発(協力:三菱重)、出力等設計見直し
  ・ '02〜   : 被覆粒子燃料製造施設導入検討(協力:原燃工)
  ・ '03    : 建設の意思表示、組織体制の強化 (開発、建設)
  ・ '03〜'04 :承認 (環境・観光省(DEAT)、安全規制局 (NNR)、
              鉱物・エネルギー省(DME)、大統領)、 大規模増資
  ・ '04〜'05 : 着工(Koeberg原発(PWR、2基)敷地内に"Koeberg 3号炉"として
              設置; 港湾等の既存インフラも活用)
  ・ '08    : プラント完成 ('10 : 運開)

  一方、米ExelonのPBMR導入プロジェクトは、McNeill会長の引退とともに撤退が発表されたが、
 現在導入の検討は継続中とのこと。また、米・露GT-MHRプロジェクトGAとMinatomが'15に露に
 原型炉建設で検討が行われている。

  原研では、HTTRが'98に初臨界を達成し、現在出口温度850℃を達成しており、水素製造システム
 の開発が並行して行なわれている。また、GTHTR-300 (ガスタービン高温発電システム)の開発
 が大洗研究所で行われている。

  この他にも、中国のHTR-10、欧州のHTR-TNプロジェクトなどが進められている。

(3)超高温ガス炉の開発動向

 @米国では原子力水素イニシアティブがDOEによって推進されている。
  ・ 1990年: 水素エネルギー法(非再生エネルギーへの依存、化石エネルギー枯渇、
                      自動車排ガス等への対策)
  ・ 1996年: 水素未来法 (DOE)
         -本格的な水素エネルギーの研究(製造、貯蔵、輸送、利用)
  ・ 1999年: 原子力研究開発 イニシアティブ (NERI) (DOE)
         -米国における新型の炉、燃料、廃棄物管理技術の開発
  ・ 2001年: 国家エネルギー政策法 (NEP) (大統領)
         -米国のエネルギー供給の多様化、セキュリティ(包括的長期戦略)
  ・ 2002年: 原子力2010 イニシアティブ (NP-2010) (DOE)
         米国内に2010年までに新規原子炉プラントを導入
  ・ 2002年: 第4世代炉システム イニシアティブ (DOE)
         -持続可能性、安全性、経済性、核不拡散性
  ・ 2002年: 国家水素エネルギー ロードマップ(DOE)
         -エネルギーセキュリティ、地球環境; クリーンエネルギーの入手
  ・ 2003年: 原子力水素イニシアティブ (NHI) (DOE)

 A米国は、原子力水素イニシアティブに基づき、アイダホプロジェクトを開始し、
  産業界が、国際協力を得ながら、発電と 水素製造の出来る高温熱電併給炉
  (高温ガス炉または超高温ガス炉と水素製造施設で構成)を公募し、アイダホに
  '10年頃迄に、建設し実証していく予定になっている。