海外情報連絡会 平成15年度 第2回講演会 要旨

IAEAと原子力淡水化プロジェクト

日本原子力産業会議  小西 俊雄 氏

 
1.IAEAにおける担当部局

 原子力淡水化プロジェクトの担当部局は、エネルギー局(Department of Nuclear Energy)内の原子力発電部原子力技術開発課であり、メンバー国の要請を受けて関連技術情報の収集と分析、共通の関心課題についての協同研究調整、各国のプロジェクトに対する技術支援等を行っている。

2.原子力淡水化プロジェクトの経緯

海水淡水化自体の必要性は高く、現在約25,000,000m3/日の設備容量があり、年間1,000,000m3/日の容量が増加している。淡水化技術としては、蒸発法(多段効用缶等)、膜法(逆浸透膜等)が一般的に用いられている。
このような趨勢の中で原子力エネルギーを利用した原子力淡水化も下記のように進展してきた。

 1960年代:先駆的検討。ただし要素技術未成熟で中断。
 1970年代:カザフスタン(1999年まで稼動)、日本で実プラント稼動開始(大飯、高浜、伊方、玄海、これらのプラントは現在も稼動中。)
 1989年:IAEAで検討再開、以来関心国増加。

3.原子力淡水化プラント検討の実情

 淡水化に必要なエネルギーのレベルは、あまり大きなものではない。熱出力一万kWで住民6万人分の水供給(8000m3/日)が可能である(モロッコでの検討例)。
インドでの実施例では、電気出力17万kWの運転中発電炉(PHWR)に、膜法、蒸発法の組合せ淡水化システムを追設する事により、6,300m3/日の設備が試運転中である。
現在進行中のプロジェクトは下記のとおりである。
国名容量m3/d検討状況と実現計画時期
インド
6,300
試運転中。2003末運転開始。
パキスタン
4,600
詳細検討中。2006運転開始目標。
インドネシア
4,000
韓国原研と共同研究。2016運転開始目標。
韓国
40,000
1/5スケールのパイロットプラント2008完成。
エジプト
100,000
成立性検討完。2012頃開始が目標だが。
ロシア
50,000-200,000
舶用式初号機を2006頃目標に機器製作。
チュニジア、モロッコ
30,000、70,000
予備検討段階でスケジュール不透明。

4. IAEAの関連活動

IAEAでの関連活動は下記のとおりである。

・共同研究のコーディネーション
・経済性評価ツールの開発と応用
・開発途上国プロジェクト計画への助言
・情報収集と配信

より詳細な情報はhttps://www.iaea.org/nucleardesalination/にアクセスして下さい。

5. まとめ

・水不足は拡大している。
・海水淡水化は実証技術である。
・原子力淡水化への関心は引き続き高まっている。
・中小型炉でも十分、開発途上国向き。
・幾つかの国でデモプラント立ち上げ中、計画中。
・IAEA活動で国際協力進行中、ビジネスの種。