海外情報連絡会 平成13年度 第2回講演会 要旨
日本のエンジニアリング産業の国際競争力
− 英米独仏との比較と今後の展望 −
日本総合研究所 理事 佐久田 昌治 氏
1.問題意識
@そもそも産業技術の基礎である「将来に向けた研究開発」はどうなっているか?
Aもし問題があるとすれば今、何をすれば良いのだろうか?将来の産業技術力強化のシナリオを描くことはできるのだろうか?
Bこれらの問題意識のもとに実施した主要分野に関する研究開発水準調査のうち、エンジニアリング産業に関する部分を紹介する。
2.米国および欧州にとっての脅威
@米国および欧州が脅威と感じている日本の技術は「製品技術」・「加工技術」。
Aエンジニアリング産業が扱う「巨大施設」・「カスタマイゼーション」・「システムの設計能力」の面では彼らは日本を脅威と感じていない。
3.我が国のエンジニアリング産業の研究開発水準
@国が積極的に取組んだ技術については欧米と同等以上の水準にある。例としては原子力全般、石炭液化が挙げられる。
A全体としてエネルギー分野は国策として重視されてきたため、わが国の水準は高い。
Bしかし、エネルギー関連の民間企業の活動はあくまで国内に限られており、今後国際的に展開する上で、これまでとは異なる研究開発活動が求められる。
⇒「高い研究開発水準」から「高い競争力へ」への転換が必須課題。
4.わが国産業の将来の最大のリスクと解決の方向性
カテゴリー | 解決の方向性 |
@民間企業の研究開発力の衰退 | ●企業の研究開発があまりにも短期的視野に立つことは危険。 ●一定のリスクを踏まえて、将来への戦略的投資として位置付けよ。 ●研究開発でもスピードが重要。 ●基礎研究と言えども、目的を明確に。研究マネジャーには「ビジネスマネジメントの感覚」を。 ●ほとんどの業種で日本企業の国際化は不十分。 |
A産学官連携システムの機能不全の継続 | ●政府のR&D政策と民間企業のニーズの突合せが決定的に不充分。 ●産学官の人材流動が全く機能していない。特別の措置が必要。 ●国の研究評価が機能していない。実効ある「評価」を。 ●官民共同で先端技術分野での共同戦線を。 |
B教育システム | ●企業および社会のカルチャーの変革が必要。 ●基礎学力の低下は深刻。 ●企業の中の技術者の自覚を。 ●徹底的に人材流動を進めるために、特別な手段を。 |