海外情報連絡会 平成13年度 第1回講演会 要旨

カリフォルニア電力危機と海外の電力自由化動向

三菱総合研究所 主席研究員  諸住 哲 氏

 
2000年の初夏から現在に至るカリフォルニア電力危機は2つの大きなパートに分れている。
・ 2000年 サンディエゴ・ガス・アンド・エレクトリック(SDG&E)社における電気料金の高騰
・ 2001年 パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E)社、南カリフォルニアエジソン(SCE)社での逆ざやによる負債急増問題

いづれの問題でも、背景には卸売り電気料金の高騰があるが、その問題をさらに遡ると天然ガス料金の全米での高騰がある。

また市場メカニズムの側面からは、不安定な前日取引市場に80%も依存している構造と、小売電気料金の抑制を約束するために採られたプライスキャップ(上限価格設定)が悪影響を及ぼしたとの指摘がある。

さらには入札システムの不備も背景となっている。

欧米で進行している公益事業の規制緩和は、料金引き下げにメリットがあるとはされているが、実態は、事業者の論理で進行しているというのが現実である。

今後の電力規制緩和の動きは次のように進んでいくであろう。

・ 諸外国の規制緩和は各種のトラブルを抱えながら不可逆的に進行していく。
  その理由としては、エネルギー技術が多様化してきたため、電気事業がエネルギー流通の一つのパスとして認識され、ガスやその他のエネルギー流通とポートフォリオを採るべきものであるという認識が定着しつつあるという点が挙げられる。

・ 日本でも規制枠を壊しながら、資本集約、すなわち合併、資本系列化による集約が続くであろう。

海外事業者は、電気事業そのものでの日本上陸よりも、世界的なエネルギー流通を抑えた上でのエネルギー産業としての上陸の方がリアリティが出てきている。

今後は日本での自由化の進展に関係なく、電力・エネルギーのみならず通信、環境産業と1次エネルギー市場を巻き込んだ激烈な競争の時代となってくるであろう。