海外情報連絡会 平成12年度 第6回講演会 要旨
中国における高温ガス炉の開発について
中国清華大学 馬 昌文 教授
中国では幾つかの原子力発電所―QinshanU(2×600MWe)、QinshanV(2×700MWe)、Tianwan(2×1000MWe)、DayabayU(2×1000MWe)―が建設中である。
これらの発電所の他に2つの型の熱供給炉―高温ガス冷却炉、低温地域熱供給炉―が、清華大学原子力技術研究所(INET)で開発されている。
高温ガス冷却炉:
・中国における高温ガス冷却炉の開発は、80年代初頭から始まった。
・高温ガス炉の利点は、安全性と高温(〜900℃)の直接応用が可能であることである。
・中国の国家ハイテクプログラムにおいて、INETに試験設備として10MWのモジュール高温ガス炉(HTR-10)を建設することが決定された。
・National Nuclear Safety Administration(NNSA)は、1994年12月にHTR-10の建設許可を出し、2000年12月21日に初臨界を迎えた。2001年には出力増が計画されている。
・HTR-10プロジェクトは2つのフェーズで実施されている。
・最初のフェーズでは、700℃に加熱された冷却材により蒸気発生器で蒸気を作り蒸気タービンによる発電と共に熱によるコジェネ。
・第2フェーズでは冷却材温度を900℃に上げ、蒸気タービンサイクルに加えてガスタービンサイクル、また、蒸気改質装置が付加される。
・INETとNational Electro Power Com,で200MWeの高温ガス炉建設の合意がなされている。
低温地域熱供給:
・中国のエネルギーシステムは主に石炭の消費に基づいている。
・環境に排出されるSO2の80%近くは石炭の燃焼からのものである。
・すぐにSO2の対策がなされなければ、多くの都市で環境汚染は許容できないものになってくる。
・石炭資源は中国の北・北西に集中しており、工業や人口は中国の東に集まっている。そのため、石炭の輸送のために30−40%のエネルギーが使われてしまう。
・ある地域での環境汚染、輸送負荷、エネルギー不足を緩和するため、地域熱供給炉(NHR)開発の計画がされた。
・83−84年に原子力応用の可能性として低温熱利用が研究された。
・清華大学INETは既存のプール型炉を用いて近隣ビルの暖房用に熱を供給した。
・5MWtの試験炉NHR-5の建設が1986年にINETで始まり、1989年に完成した。以来、問題なく暖房に利用されている。
・90年代に商業サイズの200MWt炉(NHR-200)の開発が行われた。
・NHR-200の実証炉が中国の北西のShenyangに建設されるであろう。