海外情報連絡会 平成12年度 第5回講演会 要旨

ANSおよびDOEにおける原子力の新しい提案と日米協力

ANS副会長  Gail Marcus博士

ニュース:
   DOEの次期予算が承認された。新プラントの建設やサイト問題の議論を方向付けるための新しい産業グループの委員会が設置された。米電力会社のPECOはEskomのモジュール型ペブルベッド原子炉プロジェクトの利権の10%を購入した。

原子力および電力需要増大へのニーズ:
   世界の年間における電力需要の増大は、米国1.4%、開発途上国4.4%を含め、2.5%である。このため、2025 GWの設備更新を含め年間3503 GWの設備の新設が必要とされる。これらは主にガスと石炭によりまかなわれるが10%は原子力である。

原子力をとりまく新しい状況:
   気候変化の問題は原子力をより魅力的なオプションとしている。開発途上国では、原子力は石炭より輸送インフラが少なくて済む。米国ではNRCが信頼できるパートナーとなり、既にライセンスの更新の実績がある。また、原子力発電会社と配電会社の合併が進められている。しかしながら、社会は安全性、新設プラントのコスト高の問題、プラントの経年化や使用済燃料の問題に関心を持っている。米国にとって、設置許可更新に関する不確かさ、NRCの負担の増大、発電会社の再編成が潜在的な問題である。

原子力の研究開発に対する戦略:
   政府の役割は長期間を要しリスクの高いR&Dに金を出すことである。政府の役割は又、学術団体や研究施設のようなインフラを創設、維持することにある。政府は研究(施設、データ、人員)の内部化を推進する。しかしながらR&Dコストは産業界と共に分担すべきである。

原子力プラント最適化計画:
   これは、現存する原子力プラントの効率や長期信頼性を改良するための先進技術の開発に関する産業界との協力を推進するためのEPRIとの共同研究である。14プロジェクトを含む研究分野は、材料疲労、応力腐食、デジタル& IC 、人的因子、燃料性能などに及ぶ。2000年度の予算は、DOEから500万ドル、EPRIから680万ドルが供出されている。

第4世代炉への展開:
   第3世代炉には、ABWR、システム80+、AP600、EPRが含まれる。これらのシステムは、米国においてコンバインドサイクルと競争する力がない。21世紀のための第4世代炉では、高経済性、核拡散抵抗性、高安全性、低廃棄物排出性を実現する先進的R&Dを含む新しいアプローチがとられなければならない。産業界は化石だけに頼るわけにいかず、原子力にも魅力がある。
   新しい規制のやり方も必要である。DOEはすべてのオプションを見ている。(現在はペブルベッドや小型炉に対する明確な決定はなされていない。)2030年までの範囲の第4世代炉開発計画のロードマップは2002年9月までに作成されることになっている。それには2010年までの計画が独立した章として示される。ロードマップの作成のガイドには国際的な寄与も含まれる。2000年に開始される第4世代炉国際フォーラムで、研究協力を推進する組織が設置され、候補を2?3に絞ることになっている。フォーラムへの参加国はアルゼンチン、ブラジル、カナダ、フランス、日本、南アフリカ、韓国、英国、米国である。また、IAEA、NEA、NRC、NEI、およびANSがオブザーバとして参加する。

原子力研究の先導計画(NERI):
   NERI計画は、原子力の将来の利用を拡張するために必要な科学技術であって、研究者から提案され、仲間によって評価された研究開発を政府がスポンサーになって推進するものである。それは将来の計画に対する孵卵器である。従って予算は少額であり、3年間まで給付される。この計画は必要不可欠な原子力のインフラの維持を支援する。これは、大学、産業界、国立研究所の間の協力、あるいは国際協力を推奨する。
   現在のNERIプログラムの範囲には、核拡散抵抗性、核燃料技術および高効率、低コスト、高安全性に関する設計等が含まれる。1994年において308のR&Dの提案を受け、3年間の総額で542百万ドル、46の提案が採択された。2000年には、126の提案を受け、3年間の総額1千万ドル、10の提案が採択された。1999および2000年におけるNERIプロジェクトはトリウムサイクル、原子力電池、先進軽水炉の設計、液体金属冷却材、ペブルベッドHTGR、直接エネルギ変換、モジュール型炉、工場製作システム、熱/水素燃料製造プロセスの研究を含んでいる。

国際的なNERI(INERI):
   これは将来の原子力およびそのグローバルな展開に影響を及ぼす重要な問題を方向付ける複数国相互間の研究協力を促進する計画である。2001年には、INERIを開始するため、およそ7百万ドルが予算化されている。

日本との協力:
   日米協力努力の一例は、サイクル機構との水素ベースのエネルギー供給/輸送システムの開発である。

先進的加速器応用計画:
   これは、加速器を用いた放射性廃棄物の核変換に焦点をおいた計画であり、米国の核科学および工学の高度化に関するものである。

ANSの役割の変化:
   ANSの会員数は1980年代以来、原子力産業の低落の傾向と同様の推移をたどっている。地球温暖化や代替エネルギーコスト等に関する環境の変化の中で、ANSの役割を拡張する必要性が生じている。技術交換、学生支援、技術基準の制定等の伝統的役割に加え、例えば求人銀行の設置など会員に価値のあるものを準備する必要がある。将来ANSは、Webベース情報源の準備などの会員とのコミュニケーションの高度化、メンバーが国会に手紙を書くなど草の根の努力の社会における実践および外国会員の増加や協力協定の締結などの他の学協会との協力などを図っていかなければならない。