海外情報連絡会 平成12年度 第4回講演会 要旨

仏国における原子力の現状

仏国大使館原子力参事官首席補佐  植松 真理・マリアンヌ 氏

仏国原子力発電の開発の流れ、仏国電力公社の動きおよび放射性廃棄物の処理・処分等について、以下に示すような講演が行われた。

原子力発電 -開発のながれ-
1956:

・フランス電力公社(EDF)原子力発電計画の開始
 天然ウラン燃料ガス炉(UNGG)建設
 6基:Chinon A1, A2, A3, St Laurent 1, 2, Bugey 1
1962:
・初の加圧水型軽水炉(30.5万kW、Chooz A)の建設開始
1962-1966:
・フランス原子力庁(CEA)による高速増殖実験炉(Rapsodie)の建設開始
1967:
・Chooz A(30.5万kW)送電開始
1969:
・UNGG開発を継続しないことを決定
・加圧水型軽水炉開発の路線を選択
1970-1988:
・加圧水型軽水炉(90万kW級)建設開始
・16年間に34基の建設計画開始
1973:
・高速増殖原型炉(Phenix)臨界
1976-1986:
・加圧水型軽水炉(130万kW級)の建設開始
・20基の建設計画開始
1977:
・高速増殖実証炉(120万kW)Superphenix建設開始
1984:
・N4型加圧水型軽水炉(145.5万kW)の建設開始(Chooz B1)
1987-1993:
・N4型加圧水型軽水炉の建設開始(Chooz B2, Civaux 1, Civaux 2)
1999年12月:
・N4型加圧水型軽水炉シヴォー2(Civaux 2)送電開始

加圧水型軽水炉
90万kW級 130万kW級 N4型
電気出力(万kW)
 熱出力(万kW)
燃料交換(炉心)
基数(2000.1現在)
80-91.5
277.5
1/4(1/3MOX)
34基
130-133.5
380
1/3
20基
145.5
425
1/3
4基

フランス電力公社(EDF)の動き

・設備容量(1999年12月31日現在)

原子力:63 000 MW
火力 :17 200 MW
水力 :23 300 MW
設備容量合計:103 500 MW

・輸出電力:63.7 TWh(1999年度)
輸出電力量 - 輸入電力量(単位:TWh)
イタリア
15.4
イギリス
15.3
ドイツ
13.8
スペイン
7.1
スイス
7
ベルギー
5.1
輸出電力合計:63.7
フランスの電力需給

・新エネルギーへの取組

ピエレ産業担当政務次官により、2005年を目処に250から500 MWの風力発電設備を設ける目標が定められている。
これを受け、EDFは風力発電施設の建設計画:EOLE2005を開始した。
*    この計画の一環として、21の風力発電サイト(合計200 MW)の建設を計画
*    2000年7月に第一カ所目の風力発電施設(750 MW)が運開(Widehem、パ・ドゥ・カレ県)
*    同Widehemサイトに更に5基の風力発電施設の建設予定(年間の予測合計発電量:1260万kWh)
その他、再生可能エネルギー(但し、このカテゴリーに水力発電を除く)開発

・参考:GDF(フランス・ガス公社)によるコジェネへの取り組み。

*    1998年時点で、熱エネルギー換算での供給量250 億kWhのコジェネ施設がフランス北部中心に設置されている

放射性廃棄物処理・処分

・フランスの使用済核燃料再処理方針に関連する5つの機関

  1. フランス原子力庁(CEA):原子炉および核燃料サイクルに関する研究
  2. フランス電力公社(EDF):発電・送電・電力売買
  3. FRAMATOME:原子炉施設建設および燃料集合体製造
  4. COGEMA(General Company for Nuclear Materials):核燃料サイクル全般
  5. ANDRA(French National Radioactive Waste Management Agency ):放射性廃棄物処理・処分

・1991年12月30日法
放射性廃棄物処理・処分の研究に関する法律
15年間(すなわち2006年まで)に、フランス議会は放射性廃棄物処理・処分の方針を決定することを義務づけられている。また、国外からの放射性廃棄物をフランス領土内に処分することが禁止されている。
この法律によって、1979年にCEAのいち部門として設立されたANDRAは産業省、科学研究省、環境省の直轄機関として放射性廃棄物処理・処分に関する研究・施設管理機関となった。

・High-level waste(HLW)の処理・処分
上記の法律において、長寿命高レベル放射性廃棄物の処理・処分に関して、3種の研究プログラムを実施することが定められている。

*    放射性核種の分離・変換(CEA担当)
*    地下施設における長期保管(CEA担当)
*    深層処分(ANDRA担当)
1999年8月3日の政令により、ビュール(粘土層、ムーズ県=オート・マルヌ県)地下研究所建設が許可された

・Low-level and intermediate-level waste(LILW:主に短・中寿命β、γ)の処分

*    ラ・マンシュ(La Manche)
    1969年営業開始、1994年7月閉鎖
    総受け入れ廃棄物量:525 000 m3
*    ローブ(L'Aube))
    1992年1月営業開始、今後50年間の営業予定
    総受け入れ可能廃棄物量:1 000 000 m3(年間20 000 m3)