海外情報連絡会 平成12年度 第2回講演会 要旨

スウェーデンの原子力事情

Studsvik Nuclear AB 副社長  Lief Ericson 氏

 

 スウェーデンではOskarshamm, Barsebaeckw, RinghalsおよびForsmarkの4つのサイトに12基の原子力発電所があり、1999年11月30日までは10,000 MW以上、年間でスウェーデンの電力消費の50%以上である70 TWhを発電してきた。しかし、政治的理由から1999年11月30日にBarsebaeck 1が閉鎖させられ、以降11基で発電している。

 スウェーデンの原子力発電所は安全性も経済性も高いので、Barsebaeck 1の閉鎖により国民は約1B$の負担を強いられることになり、発電量の不足はスウェーデンの石油火力やデンマークの古い石炭火力の電力輸入に頼ることになり、年間2〜4百万トンの炭酸ガス放出の増加につながる。

 Studsvik社は50 MWのR2炉と1 MWのR2-0炉を所有し、燃料照射試験を初めとして種々の研究開発を行っている。種々の研究開発の中でもNuclear Medicineに関しては以下の通りである。

 BNCT (Boron Neutron Capture Therapy) は腫瘍の放射線治療の一つであり、ボロンに中性子が当たって出るα線で腫瘍細胞だけを破壊できる特徴を有する。このため体内の患部の位置での中性子エネルギー(分布)が重要であり、R2炉に重水とリチウムで中性子を減速して取り出す窓を設けた。また、一方向からだけでなく2方向から患部を照射することにより健全部分への影響を軽減できる。R2炉では、間もなく医療棟が完成し、近辺の医療施設と提携したBNCT治療が開始される予定である。

 Heliprobeは胃潰瘍の検査装置である。胃潰瘍の約半分はヘリコバクター・ピロリ菌によるものであるが、これを検出することが難しかった。C-14の入ったカプセルを患者に飲ませ、10分後に息を測定すると胃の中に菌が居る場合はC-14を含む炭酸ガスが検出される。これにより、患者に苦痛を与えることなしに簡単かつ確実にヘリコバクター・ピロリ菌の有無を判断することができる。

 また、ヨウ素125による前立腺癌の治療法も開発している。針状にしたヨウ素125の線源を患部近くに挿入することにより安全な治療をすることが出来る。