海外情報連絡会 平成11年度第4回講演会「IAEAでの8年間」
講演者:大井 昇 日本原子力産業会議参与
I) 日時 2000年1月25日 18:00?19:15
II) 場所 三菱重工業(株)本社ビル2F
202、203共同会議室
III) 講演の要旨
IAEAは2100名の職員と220M$の予算を有する組織である。IAEAでの仕事の内容、プルトニウムの管理、IAEAでの日本のプレゼンス及び国際機関への就職を考えている方へのアドバイスについて下記のような話があった。
1)IAEAにおける仕事
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燃料サイクル・廃棄物部に8年間勤務したが、赴任当時はセクションにロシア人が多く、英語・報告書内容がひどいとまわりから言われていた。
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自分の土俵で話を進める、話し合いの内容をサマライズするなど工夫をした。タフなバトルができないとやっていけないところもある。
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STAからの事業資金がもらえて、よい仕事ができた。ウレンコ社長をした米国人を雇い仕事をしてもらった。よくまとめてくれた仕事に、1997年ウィーンで開催した“Nuclear
Fuel Cycle and Reactor Strategy: Adjusting to New Reality”がある。
2)プルトニウムの管理
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INFCEでは国際的なプルトニウム管理の課題がとりあげられた(ブリックス事務局長の構想として取り上げたが)英仏の反対で進めなかった。その後、余剰兵器用プルトニウム問題が浮上している。
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しかし、プルトニウムインベントリーを需要/供給のバランスで見ると、民間用プルトニウムインベントリ?の増加が大きな問題である。
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世界全体では、使用済み燃料中のプルトニウムを含めて1991年に約100トン存在していた。2000年では約200トンまで増加する。2010年までに約270トンに達する見込みである。
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余剰兵器用プルトニウムの処理は技術的には20?50年の短期間で使用済み燃料化(Spent
Fuel Standard基準を満足させること)は可能である。
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しかし、この使用済み燃料が200年程度経てば、生成された放射性核分裂核種のほとんどが崩壊して安定化し、Spent
Fuel Standardに適合するか問題となるとの議論がある。Spent Fuel Standardは短期的解決策と認識されている。
3)IAEAでの日本のプレゼンス
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分担金比率から見ると日本の職員数は適正職員数に比べると圧倒的に少なく、また、セクションヘッド以上のポジションの人も少ない。さらに、公募ポストへの応募者数も日本は世界で10位以下である。
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国内給与との関係、家族・子供の教育問題(家族・子供の海外適用性も問題)、売り込み不足がその一因であろう。
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公募ポスト1つに約50人が応募してくる国もある。。明らかに募集条件を満たさないものも多いが、積極的である。一方、日本は国内でふるいにかけ公募者を絞ってくる傾向がある。
4)国際機関に就職を考えている方へ
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これからは、定年を迎える年齢の人がよいと考えられる(子供の教育問題はほぼかたがついている)。
5)まとめ
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IAEAで仕事をするのは難しい。ロシア人・途上国からの職員はあまり英語ができない。いろいろなレベルの人がいる。彼らは、ポストを確保するために必死なところがある。IAEAでの収入は母国におけるそれに比べ大きいためポストをはなれたくない。売り込み・評価問題では、マネージャが明確な要求・判断をしていくことがポイントである。
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採用にはインタビュウーが大切。一度採用すると、めがね違いでも5年間は辛抱が必要である。
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途上国からの採用と女性との問題(Love
Affair)等はいつも問題となる。
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プロジェクト推進にはそれにふさわしい人(Right
Person)を見つけることが大切である。
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国際機関の役割・限界の難しさを痛感した。やたらと加盟したがる国が増加している。レベルの違い、情報管理の問題、国が多すぎると何もできなくなる。
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フランスなど欧州の国も割合が少ないと考えている国もある。