フランスにおける高速増殖炉の現状】

講演者:JC Astegiano
 CEAカダラッシュ研究所 原子力局原子炉研究部部長代理
 I) 日時 1999年11月22日
 II) 場所 日本原子力研究所本部
 III) 講演の要旨
 1) フランスで建設・運転を行ってきた各々の高速炉と欧州統合高速炉
  (EFR)の開発経緯、現状および今後の計画について下記の説明が
   あった。
  ・Rapsodie:1967年1月に初臨界を達成し、熱出力40MWtで2,703 EFPD
   の運転を行った後1983年に閉鎖された。
  ・Phenix :1973年8月に初臨界後、250Mweで1998年11月までに
   3,860 EFPDの運転(発電累積総量20.9TWh)の実績がある。この間 
   1973年〜1990年にかけては大変順調に運転された。1990年以降は、
   2次系老朽化による破損の補修作業や寿命延長のための改造工事
   などが行われた。現在は、耐震補強工事、寿命延長のための炉心支持
   構造物溶接部の健全性確認、SG配管亀裂原因究明、IHX漏洩原因   
       究明等を実施している。今後、2000年末に運転再開し、定格の2/3の
   出力で2004年までに560 EFPDの運転を予定している。
   Phenixの運転の目的は従来の高性能燃料開発のための照射試験の
   実施、及びS-Phenixを用いて行うとしていたプルトニウム燃焼、
   1991年12月政令で定められた放射性廃棄物処理に関する研究開発
   計画の一環として、長寿命放射性廃棄物の燃焼研究を実施すること
   である。
  ・S-Phenix:電気出力1,200Mweの世界最大の高速増殖炉として1985年
   9月に初臨界に成功し、320 EFPD(発電累積総量7.9TWh)の運転を
   行ったが、1998年2月に経済的に見合わないとの理由から閉鎖を
   正式に決定した。現在は、廃炉作業に着手され、燃料の取出し作業が
   開始された。この作業は2001年の中頃まで続く見通し。
  ・EFR  :EFR開発計画は1988年3月にスタートし、1993年3月までに
   概念設計とその妥当性検証作業を終了した。その後、建設準備作業を
   スタートさせる予定であったが、S-Phenixの事故等を契機に1998年
   12月にプロジェクトは中止された。
 2) PhenixとS-Phenixから得られた経験としては以下があげられる。
  ・ナトリウム冷却型高速増殖炉としての大型実証炉の建設経験
  ・燃料や冷却系などの設計に関する設計コードや設計基準などの経験
  ・貴重な事故経験を含む運転経験(冶金工学、ナトリウム化学、計装、
   ISI技術他)
  ・ 軽水炉に匹敵する安全基準
 3)仏国は、高速炉長期開発計画を維持するために、今後もR&Dを継続
   実施する方針であり、当面以下を進める。
  ・91年の放射性廃棄物処理に関する政令に基づいてLLFPの核種変換と
    核分裂生成物処理に関するR&Dを実施する。
  ・Phenixを用いてマイナーアクチニドの燃焼や長寿命の核分裂生成物
   (LLFP)の核種変換研究、プルトニウム燃焼に関する研究開発を
    2004年まで実施する。
  ・2005年までにS-Phenixの廃炉作業をIAEAレベル1程度まで進める。
 
 2004年以降、仏国内では運転を継続する高速炉はなくなるが、日本や
 ロシアとの国際協力で、これを補っていきたい。特に日本に対する期待は
 大きく、もんじゅの一日も早い再開を希望する。         以上