海外情報連絡会 平成10年度 第1回講演会 要旨
「世界のエネルギー需要の動向と原子力の将来展望」
米国原子力学会長 Stanley R.Hatcher 博士
(1)世界のエネルギー需要は、世界的な人口の増加、テレビ、通信等のコミュニケーションの革新、生活レベルの向上指向、環境保護などにより、ますます、拡大している。エネルギー消費の現状(1995年の統計から)を見ると、一人当たりのエネルギー消費は、北アメリカで270GJ/Capita、OECD諸国全体で約200GJ/Capita、発展途上国で20GJ/Capitaであり、平均では60GJ/Capitaであるが、世界人口の80%を占める発展途上国の生活レベルの向上を考慮すると、将来、飛躍的に増加する。
(2)西暦2050年を見越したエネルギー需要は、個人生活レベルの向上からの推定で1000EJ、過去からのエネルギー消費の増加率による外挿での推定で1100EJ、また、World Energy Councilの推定では650-1150EJとなり、アプローチが異なっても約1000EJが見込まれる。この値は1995年のほぼ3倍にあたる。一方、現在のエネルギー生産の内訳を見ると、化石燃料によるものが約80%を占め、原子力は約7%である。2050年における内訳の推定は、現状の比率で推移すると仮定したもの、炭酸ガス放出削減(京都会議対応)を考慮したものなど色々と考えられ、その比率は異なる。しかし、いずれのオプションであっても、原子力の今後の増加が見込まれる。
(3)エネルギー開発においては、規制緩和、負債低減、資本獲得、投資への見返り、競争力などが経済的背景での重要事項としてあげられ、これらを考慮する必要がある。原子力の競争力を高めるためには、すでに自動車、航空産業に見られるごとく、規格化、工場組立等の推進を行い、建設期間の短縮、建設コストの低減を計ることが必要である。
(4)これからの原子炉としては、改良型軽水炉(ALWR)、大量生産型軽水炉、将来型原子炉が考えられる。これらのうち、将来型原子炉は、価格における競争力、天然の燃料資源の効率的使用、高い熱効率が求められる。また、工学的に許されうる技術であることが必要であり、特に、冷却材の化学的反応性に留意しなければならない。ALWRは熱効率、資源の有効利用の観点において劣性であり、また、金属冷却材FBRでは冷却材の化学的反応性に弱点がある。このため、高温ガス炉、ガスタービン、FBRを組み合わせたガス冷却FBRの有用性が考えられる。
上記講演に引き続き活発な質疑応答が行われた後、さらに、ANSの活動の遷移と今後の活動計画について紹介があり全講演を終了した。