技術士受験体験記

高橋 聡


(1)動機

 JAEA(旧原研)に出向していた際に、核燃料取扱主任者試験(以下:核取試験)の解答案作成のお手伝いをする機会が有りました。かなりMOX燃料加工の分野に係る出題が多いことがわかり、約10年ぶりに核取試験に挑戦しようと思い立ちました。さらに、日本技術士会竹下専務理事が旧原研時代に広報活動を東海研究所で実施されていたので、この国家資格(技術士(原子力・放射線部門))の存在を知りました。核取試験と技術士試験(燃料サイクル)の出題範囲が類似していることがわかり、技術士試験勉強が核取試験にそのまま生かせる事を発見しました。技術士1次試験(10月)、核取試験(3月)、技術士2次試験(8月)の順番で無駄なく試験勉強が可能で、特に核取用に暗記した知識は技術士試験でも有効となっていました。


(2)一次試験対策

 受験対策の方法も全く分からなかったので、大きな書店でオーム社出版の「技術士一次試験完全研究(H16年6月25日発行)」を購入し、参考としました。原子力・放射線部門の記載はほんの一部でありましたが、基礎科目、適性科目、専門科目の例題があり、これらを何度も読み返すことで、適性科目の問題に対する出題傾向の把握には有効であります。旧原研に出向期間中であったので、1次試験費用は自腹で払いました。


(3)二次試験対策

 2次試験の経験論文に対してはキャリアの中でのグループリーダー(GL)以上のマネジメントの経験を書くことが重要であると聞いてはいましたが、私はGL以上の役職の経験はありませんでした。しかし、新規分野の部署と旧原研出向の際にプロジェクトチームの一員となる経験の2つを経験論文の題材として選択して下書きを積み重ねました。実際の2次試験で規定されている文字数に合うようにWORDで文字数調整を実施。膨大な量を暗記するために、実際にバインダーノートに手書きを実施して、通勤時間等の空いた時間に読み返す作業を繰り返しました。これにより半分以上の内容は問題なく記載することができました。但し、思い出せない部分を作文しながら答案作成の作業をしたため、試験時間最後まで費やすこととなりました。

 選択科目の対策としては、核取試験用に回答案を沢山集め、バインダーノートにファイリングしました。過去問題の傾向より、ウラン資源量、六フッ化ウランの転換法、再処理施設の安全設計、放射性廃棄物の発生、ウラン濃縮法については解説資料をインターネットで集めて、バインダーノートに手書きを実施した。放射線分野に関しては、「原子力eye」の第1種放射線取扱主任者試験の直前対策記事を参考としました。原子炉分野は長年の原子炉核設計業務の経験に期待しました。基本的には、核取試験用に集めた資料から2次試験用にピックアップして、これはと思われる項目に対してはさらに詳細な情報を集めて説明文書を作成してから、手書きをしてバインダーノートに残す作業を実施しました。


(4)口頭試験対策

 技術的体験論文の中身に関すること、技術士法や技術者倫理について質問があることと予想していた。二次試験回答内容や技術者倫理に関する質問については、問題なく答えられたが、「論文の作成の経験は?」との質問には回答を用意していなかった。旧原研に出向期間中にプロパー研究員の論文作成のお手伝いをした程度と答えたが、実はJAERI-Techレポートを作成して発行していることを失念していた。論文ではないが、それに順ずる程度のレベルであるので、後で後悔しました。


(5)資格取得後

 所属する社内で取得一番乗りを目指そうと考えていたが、2人目または3人目でした。社内での資格取得者をさらに増やす活動が必要です。現在、出向している会社では、原子力部門に私と2人、建築部門と電気電子部門に1人ずつで4人である(未申告の方がいなければ)。許認可における技術的審査に本格的に採用・反映される方向性となっているため、資格保持者を増やすことが急務と考える。現在、出向している会社での技術士(原子力・放射線部門)の知名度と重要度が低く資格者養成プログラムのようなものは存在しない。しかし、会社の業務に必要な資格・技能に対する教育プログラムは充実しており、トップの方針さえ変更されれば東京電力並みの体制もそう遠くないと考えられる。現在、技術士3人で人事部、能力開発部に働きかけを実施し、技術士1次試験受験者拡大キャンペーンの実施を企画検討している。

 燃料サイクルは全て繋がっているが、それぞれの事業は許認可も別で後工程のことを配慮した設計を実施している事例は少ない。技術士同士のつながりを通じて企業間の見えない垣根を取り外したい。定年後は、技術士の資格を生かした地域のボランティア活動にも参加してみたいと考えています。

以上


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